top of page
  • 執筆者の写真totto winery

鳥取市唯一のワイナリー「兎ッ兎ワイナリー」が実践するサステイナブルなワイン造りの取り組みのご報告

はじめに

 

4月22日は地球環境について考える「アースデイ」です。この日に合わせて、当社が持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいる、サステイナブルなワイン造りについて今年もご報告します。昨年のワイン用ブドウの仕込み量は2022年比の8%増の10,300kg、またコロナの5類引き下げにより多くの経済活動が再開されたこともあり、売上高は2022年比の119%を達成することができました。当社は、まだまだ発展途上の段階であり、兎ッ兎ワインを1人でも多くの日本ワインラヴァ―へ届けたいという強い信念をもって、サステイナブルなワイン造りを実践しています。

 

1 企業理念

株式会社兎ッ兎ワイナリー(代表取締役:前岡美華子)は『ブドウとワイン造りをとおして人がつながり夢と未来を創造する』ことを理念とし、自社栽培のブドウによるワイン造りに取り組み、地域住民と共に豊かな人生の1ページを共創することを目指しています。

 

2 地域環境

2-1  平均気温

当社が所在する鳥取市国府町では、地球温暖化の影響により年々平均気温が上昇しています。図1は、鳥取市の4月から10月(ブドウ栽培期)における平均気温の推移を示しています。2023年の平均気温は、前年と比べ全体的にやや上昇し、特に8月の平均気温は30度に達しており前年よりもおよそ2度上昇しています。また、図2は鳥取市における年平均気温の推移と3年移動平均を示しています。2014年頃から平均気温の上昇が加速し、2014年と比べ2023年はおよそ1度上昇しています。

図1 鳥取市における平均気温の推移


図2 鳥取市における平均気温の推移と3年移動平均

 

2-2  降水量

図3は鳥取市における合計降水量の推移を示しています。2023年の合計降水量は4月~8月にかけて比較的多く横ばいとなっていますが、8月の降水量の85%は15日~16日に発生した台風の影響によるものです。降水量に関しては、年ごとに異なる特徴が見られ、平年並みという言葉は通用しない傾向にあります。

 

図3 鳥取市における合計降水量の推移

 

3 2023年度の成果

3-1  カーボンフットプリントの自社算定を目指した活動

当社のサプライチェーン上に発生する温室効果ガス算定のため、鳥取県が取り組む『サプライチェーンにおけるCO2排出量見える化・削減の見える化」事業の下、CO2排出量算定に取り組みました。

加えて2023年10月から2024年1月の期間、一般社団法人グリーンCPS協議会のご指導の下、フラッグシップワインである『ヤマソービニオン2022』の生産時におけるCO2排出量の算定を行いました。以下、その手順を紹介します。

 

3-1-1  ライフサイクルアセスメント(LCA)の実施

 

◆  バウンダリとカットオフの設定

LCAとはある製品・サービスのライフサイクル全体(原料調達、生産、流通、廃棄・リサイクル)またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法です。『ヤマソービニオン2022』のLCAを実施するに当たり、まずはバウンダリとカットオフの二つを設定しました。バウンダリとは算定対象範囲のことであり、製造サイクルのどこからどこまでを算定の対象範囲とするのかしないのか線引きをしました。カットオフとは特定のプロセスを対象範囲から除外することであり、設定した範囲内において、算定できないものや影響が小さいものなどを除外しました。図4及び図5は、『ヤマソービニオン2022』の栽培・醸造・ラベリングのライフサイクルフローを示しており、CO2排出量の算定はこの範囲で行いました。

 

 図4 『ヤマソービニオン2022』の栽培ライフサイクルフロー

 

 

図5 『ヤマソービニオン2022』醸造・ラベリングライフサイクルフロー

 

◆  使用量・消費量などの積上・配分

対象算定範囲を設定後、製造過程で用いるガソリンや電気などの使用量・消費量を測定しました。このとき、一つずつの数値データを集積する積上と、合計使用量を製造量の割合で求める配分の二つがあります。今回の算定では、仕込み量やコルク、ビンなどの使用資材量は積上を採用し、その他燃料等はブドウ収穫量やワイン製造量で配分しました。

 

◆  排出係数を用いたCO2排出量の算定

CO2排出量の算定については、グリーンCPS協議会が提示する排出係数を用いました。今回用いた係数と各排出量の計算数値は諸般の事情で非公開とします。

 

3-1-2  考察

当社では、2022年から全使用電力をとっとり市民電力が供給する再生可能エネルギーへ切り替えました。そこで『ヤマソービニオン2022』の1本あたりのCO2排出量について、再生可能エネルギーへ切り替える前後の変化を比較しました。図6は、『ヤマソービニオン2022』の再生可能エネルギー導入前後の1本あたりの相対CO2排出量を示しています。当社では、再生可能エネルギーを導入した結果、ワイン1本あたりのCO2排出量をおよそ47%まで削減できていることが分かりました。


図6 再生可能エネルギーシフト前後におけるワイン1本あたりの相対CO2排出量

 

本調査をするにあたり、海外のワイナリーが公表している排出量に関するデータと比較検討を致しました。Luis Printo da Silva.,2022【1】によると海外のワイナリーではブドウ栽培・ワイン醸造・瓶詰過程を対象範囲とした、CO2排出量は0.68~2.68kg-CO2eqであり、同様の対象範囲を設定した私たちが算出した数値もこの範囲内に収まったことから、私たちは信頼度の高いLCAを実施することができたと考えています。

 

3-1-3  今後について

今回の活動を通して、外部委託でしか算出することができないと考えていたCO2排出量を自社で算定することができ、製造サイクルの各過程でのCO2排出量の把握が容易になりました。今後は、自社ワインの一本あたりのCO2排出量のうち72%が瓶を占めていることから、瓶へのアプローチを模索する他、自社全体で排出するCO2を削減しつつ、ブドウ栽培によるCO2吸収量に関する研究を進め、カーボンニュートラルの実現に向け取り組んでいきます。

 

3-2  再生可能エネルギーへの転換

当社のワイン醸造は、果実味あふれるワインの醸造ため低温醗酵が特徴です。ブドウ収穫時期からワイン瓶詰時期の夏から秋にかけては、ワインを冷却するための電力使用量が増大します。2023年の電力使用量の推移は図7の通りです。事業継続にあたって、電力の使用は避けられない問題であり、当社は2022年7月より電力の全量を再生可能エネルギーへと転換しました。再生可能エネルギーに転換することで、使用電力を化石燃料に依存しないワイナリー経営を可能にします。


図7 電力使用量の推移

 

表1はブドウ仕込み量と電力使用量を示しています。2023年のブドウ仕込み量1kgあたりに対する電力使用量は2.59kWh/kgです。2023年は2022年以前と比較し電力使用が増加していますが、仕込み量も増えているため、仕込み量あたりの電力使用量は2021年よりも抑えられています。今後も仕込み量あたりの電力使用量を抑えることでよりサステイナブルなワイン造りを進めていきます。

 

仕込み量

[kg]

電力使用量

[kWh]

仕込み量1kgあたりの電力使用量[kWh/kg]

2021年

5,000

16,730

3.35

2022年

9,503

21,130

2.22

2023年

10,300

26,678

2.59

表1 仕込み量と電力使用量

 

3-3  技術発展・情報交換を目的とした場づくり ―梅垣塾の開講とその成果―

山陰地区を中心としたブドウ栽培技術向上のため京都から梅垣氏を迎え、定期研修会を実施しました。気候的特徴の似通った地域のワイナリー関係者で検討協議することにより、当地域のワインの質向上を目指しています。

3-3-1 成果

2023年1月から2024年12月にかけて全6回開講し、日本の気候、ブドウの生理、剪定、品種とその改良について座学を行い、圃場見学等を行いました。述べ106名の方に参加いただき、梅垣氏の活動や持続可能な栽培方法についての考え方を普及するとともに、参加者同士での現状や今後について意見を交換する機会となりました。(写真1)

写真1 梅垣塾実施風景


3-3-2 今後について

2024年度も、似通った気候特性を持つ山陰を中心としたワイナリーのブドウ栽培技術とワイン品質の向上を目指し活動を重ねます。

 

3-4  鳥取食文化の発展を目指して

私たちはただワインを造るだけでなく、消費者、飲食、販売など周辺事業へ、ワイナリーとして様々なモノ・コトを還元していきたいと思っています。2023年度は兎ッ兎ワインを通して、食文化を盛り上げる企画をしました。鳥取の方々が地元のワインと食に触れる機会を多く作ることによって、様々な意見やアイデアが生まれ、それが私たちのワインをよりおいしくするきっかけになると考えています。

 

3-4-1 出張セミナー

  お客様がもっと詳しく地元ワインの魅力や楽しみ方を実感していただくために、ワイナリースタッフによるセミナーを4回開催しました。今後は県内の事業所を対象とした、福利厚生の一環で行うセミナーも企画していきます。(写真2、3)

写真2 鳥取大学での出張ソムリエワインセミナー


写真3 ソムリエ協会鳥取支部例会におけるワイナリー活動紹介

 

3-4-2 鳥取の食を盛り上げるセミナー

鳥取県の飲食、酒販、サービス従業者などを対象とした食に関するセミナーを主催しました。鳥取県の補助金である『令和5年度「食パラダイス鳥取県」多様な食でおもてなし推進事業』を活用し、県外から鳥取に縁のある講師を招き、講師の視点から鳥取県で食に関する仕事に従事している人を対象に提案や議論をする場を設けました。(写真4、5)

 

写真4 『カンテサンス』(北品川)のソムリエ戸田氏によるワインセミナー

 

写真5 『フランス料理aBee』(尾山台)のシェフ阿部氏によるペアリングセミナー

 

3-5  活動や取組実績(抜粋)

実施日

活動や取組

4月22日

2023年版サステナビリティレポート発信

5月17日

ソムリエ協会鳥取支部例会セミナー講演

7月15日

因幡国府ツアー受け入れ

7月19日

香港ツアー受け入れ

9月21日

鳥取市立鳥取南中学校見学授業受け入れ

12月3、4日

ワインエキスポin大阪2023出店

1月6日

鳥取の食を盛り上げるセミナーソムリエ戸田のワイン塾開催

1月14日

鳥取大学県内企業見学シャトルツアー便受け入れ

1月17日

令和5年度サプライチェーンCO2排出量見える化事業成果発表会

2月8日

鳥取県立鳥取東高校「鳥取学」講演

2月23日

西国葡萄酒祭2024出店

3月3日

鳥取の食を盛り上げるセミナーaBee流食の魅力を引き出す流儀開催

 

4 今後のプロジェクト

 

4-1 短期の計画

第一に、剪定枝の処理です。昨年までは県内事業者が枝を買い取り、木質ペレットの材料として利用されていました。しかし本年から受け入れが無くなってしまったため、剪定枝の処理方法を再検討しなければなりません。地域や環境のために持続して行える方法を目指して、炭化粉砕処理などを検討していきます。

第二に、地域環境の保全活動です。近年多くの農山村では、人手不足などの問題で集落の維持活動が困難になりつつあります。当社が所在する麻生地区も人口の減少や高齢化により、水路や農道、農地の維持管理が課題となっています。当社は農村集落内にあり、私たちが維持活動に関わり、地域環境の保全を行うことで、この地域で長くブドウを作り続けることに繋げていきます。

 

4-2 長期の計画

第一に、当地域で電力を供給できるシステムを模索します。現在、小水力発電や太陽光発電など、ワイナリーでできる可能性のある電力発電を他の事業者と協議しています。長期的な取り組みになりますが様々な可能性を検討して、地域で循環するシステムづくりを見据えて取り組みたいと思います。

第二に、自社製造活動におけるカーボンニュートラルを目指します。ブドウ栽培やワイン醸造などに由来するCO2の排出をブドウ栽培によって吸収されるCO2で補うことを検討します。

その他に、醸造中に発生するCO2の再利用について、各種専門家と引き続き協議します。

 

5 参考文献

【1】Luis Printo da Silva(2022),Evaluation of the carbon footprint of the life cycle of wine production:A review, Elsevier B.V.

 

【お問い合わせ先】 株式会社兎ッ兎ワイナリー 担当:野口 e-mail:totto-winery@dune.ocn.ne.jp

閲覧数:42回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page