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鳥取市唯一のワイナリー「兎ッ兎ワイナリー」が実践するサステイナブルなワイン造りの取り組みのご報告


はじめに


 4月22日は地球環境について考える「アースデイ」です。この日に合わせて、小規模生産者においても、持続可能な社会の実現に向けて行動する機会にしたいと考え、サステイナブルなワイン造りの取り組みをご報告いたします。昨年は、コロナ禍で消費生活や生産活動にさまざまな制約や停滞がありましたが、兎ッ兎ワイナリーは、2022年はワイン用ブドウを9,500kg仕込み、2021年比売上高150%を達成することができました。まだまだ発展途上であり、兎ッ兎ワインを1人でも多くの日本ワインラヴァ―へ届けたいと強い信念をもって、サステイナブルなワイン造りを実践してまいります。

昨年もアースデイに向けて第1回目のサステイナブルレポートを発信しました。4月14日の時点で日本語版が315回、英語版が92回閲覧されました。(※自社ホームページより)国内外から当社の取り組みに関心を寄せていただいております。


1 企業理念

 株式会社兎ッ兎ワイナリー(代表取締役:前岡美華子)は『ブドウとワイン造りをとお して人がつながり夢と未来を創造する』ことを理念とし、自社栽培のブドウによるワイン造りに取り組んでいます。


2 地域環境

 当社が所在する鳥取市のブドウ栽培期間中(4月~10月)における気候のデータをまとめます。

 平均気温に関して、2022年は全体的に前年までと比べてやや上昇しています。


図1 4月~10月における鳥取市の平均気温の推移



 下図は鳥取市における平均気温の推移と移動平均を表したものです。近年の地球温暖化の影響を受けて、2014年ごろより約1度の上昇が見られます。

図2 鳥取市における平均気温の推移と3年移動平均



合計降水量は、昨年と大きく異なり夏季の降水量が大幅に減りました。雨量に関しては、年別で様々な傾向がありますが、6月~9月にかけての降水量が多いことが鳥取の特徴です。



図3 鳥取市における降水量の推移



3  令和4年度の成果


3-1 圃場拡大による農地利用の経過

 当社は2007年から2021年にかけて1.48haの耕作放棄地をブドウ畑に転換してきました。2022年から2023年にかけて、0.4haの圃場を新たに増やし成園化※1を目指します。

この圃場は、土地の持ち主が2021年まで水田として利用していましたが、高齢などの理由で水田の維持が困難となり、当社が農地として利用することとなりました。ここでは、当社のフラッグシップワインである「ヤマブラン」、2022年から収穫を始めた兎ッ兎ワイナリーオリジナルブドウ品種「宇倍野(ウベノ)」「Lino(リーノ)」などの増産を検討しています。これらの品種は日本の気候に適応することを目的に国内で開発された品種です。

近年の地球規模の気候変動をうけ、日本の環境に順応した品種を育てることで、当社のワイン生産本数を確実に増やすとともに、日本ワイン産業の可能性を広げることができると考えています。品種の詳細については後述します。

新圃場の合計予定収量は3,484kgで醸造本数に換算すると、4,645本(750ml換算)になります。

※1 ブドウの果実が収穫できる状態。未成園か成園になるには通常2~3年かかる。


写真1  新圃場予定地(右奥の建物がワイナリー)




写真2  上空から見た新圃場予定地(引用:GoogleMapより)



3-2 再生可能エネルギーへの転換

 ワイナリー事業において、当社は夏のブドウ収穫時期から秋のワイン瓶詰時期にかけて、醗酵作業のため電力消費が増大します。本年の電力使用推移は図4の通りです。



図4 2021年と2022年の消費電力の推移



 事業継続にあたって、電力消費は避けられない問題であり、当社は2022年7月より使用電力の全量を再生可能エネルギーへと転換しました。再生可能エネルギーに転換することで、使用電力を化石燃料に依存しないワイナリー経営を可能にします。

本年のブドウ仕込み量1kgあたりに対する電力消費は2.22kWh/kgであり、前年に比べると約34%減少しました。また、2022年は当社のワイン保管機能の向上のため、ワインセラーを増設しました。セラーを導入することで合計消費電力は増えましたが、醸造容器あたりに対する果汁量を増加することで昨年よりも多くのブドウを仕込むことができ、昨年比2倍弱の仕込み量に対して低温醗酵をすることができました。その結果、仕込み量当たりの電力消費量を削減することに成功しています。さらに、ワイン品質の向上も見込めます。以前は醸造スペースの片隅で瓶詰め後のワインを保存していましたが、保存専用スペースを設けたことで一定の温度・湿度下での管理が可能になり、ワインの瓶内熟成を安定して行えるようになりました。温度・湿度の変化はワインの樽貯蔵と瓶貯蔵にとって好ましくありません。例えば樽貯蔵において、湿度が高ければカビ発生の原因となりワインに好ましくない香りをつけることになります。瓶貯蔵においては、温度の上昇はワインの果実香や芳香を消失させてしまいます。また光がワインに直接当たることで酸化や化合物の合成が促進され、ワインが不快臭を持つ恐れがあります。ゆえに、セラーのような保存環境を整えることはおいしいワインを造るために必要な条件です。※2

※2 横塚弘毅: 醸協、95、3、172-182 (2000)


表1 仕込み量と使用電力



 今回のセラー導入で、ワイン樽の保管可能数が2倍以上になり、瓶詰後のワイン保管も1万本以上保管できるようになりました。これによって、多様化するお客さまのニーズにお応えすべく、今まで以上に良質で多岐にわたる酒質のワイン造りにチャレンジが可能となります。

再生可能エネルギーに転換かつ、ワイン醸造に必要な電力消費を抑えることでよりサステイナブルなワイン造りを進めています。



3-3 気候変動に備えるためのブドウ新品種の開発と栽培

 創業以来、ブドウ栽培で開発を続けてきた新品種を、本年から初めてワインとして売り出すことになりました。新品種は『農薬をまったく使用せずに育ち、鳥取県の食材と相性の良いワインを造る』を目標に京都府福知山市のブドウ栽培家・育種家の梅垣誠氏と共同で研究してきました。梅垣氏は以前より耐病性があって果実が裂果しない日本の気候風土にあったブドウ品種を研究していた専門家であり、野生のブドウや耐病性品種、ワイン専用品種、オリジナル交配品種を収集しながら研究をされています。

現在、農薬散布は化学的な知見を通して病害虫の対策をすることが主流ですが、気候変動によって散布量の増加や原料の価格高騰などを併発している実態があります。そのような状況において、安定してブドウを作り続けるためのひとつの方法として、変化する環境に適応できる品種を創出することを目指し、様々な品種交配や選抜に取り組みました。

梅垣氏と兎ッ兎ワイナリーでは、この計画を「母なるブドウプロジェクト」と名付け、2013年から始動しました。様々な交配から得られた27種類の組み合わせを自社圃場に植え、4年間まったく農薬を与えず栽培をした結果、無病とは言えないが樹としてしっかりと育ちおいしい果実を実らせた数品種を選抜しました。

その内、白ワイン用ブドウ品種2種は2017年より本格的に栽培を始め、2022年にはそれぞれ製品化に十分な収量を確保でき、待望のワインへとなりました。

まだ目標には遠い成果ではありますが、鳥取の気候風土の中で育まれた品種で、環境に配慮した栽培が可能になる技術を確立し、地元の食材ともマッチしたワインに醸造できるように研究を続けてまいります。以下、本年より販売を開始した2品種を紹介します。


◆Lino(リーノ)

 さわやかなマスカット香が特徴のブドウです。ワインに醸造した際は、強いマスカットの香りにしっかりとした酸味を感じられる味わいとなりました。まだ収量は少ないですが、畑の成園化に伴い、2023年は収量がさらに増える見込みです。

本品種は梅垣氏が所有していた耐病性のある品種の交配から生まれました。 


写真3 Lino(リーノ) 



◆宇倍野(ウベノ)

 病害虫の大きな被害も無く、ワイン醸造にふさわしい小房な果実をつけました。収穫1年目でしたが、果実のコンディションはよく、甘味、酸味ともに今後が楽しみになる出来となりました。ワインに醸造した際は、他の白ワインにはないパイナップルのような香りと甘味、酸味を強く感じました。

本品種は日本の気候風土に合うように日本の野生ブドウを交配に用いています。   



 写真4 宇倍野(ウベノ)



3-4 地域コミュニティに根差した活動

 2022年は、ブドウ栽培・ワイン醸造に関する取り組みだけでなく地域コミュニティに根差した活動にも力を入れていきました。その一部を報告します。


◆yogotoマルシェの定期開催

 2021年から不定期的に開催していたマルシェを2022年からは4月~7月、9月~11月で開催し、年間でおよそ1,000人の来場者がありました。国府町麻生地区にマルシェを通じて地域と地域外の様々な人の触れ合いの場所となり、地域のコミュニティを盛り上げるきっかけになるよう2023年も継続して行います。

 ※yogoto(よごと)とは吉事と書きます。良いことを意味する言葉で、奈良時代に因幡の国司である大伴家持が万葉集に記載した「新しき年の初めの初春の 今日ふる雪のいやしけ吉事(訳:新年を迎え、初春も迎えた今日に降る雪のように良いことたくさん積もれよ)」から引用しました。

 



写真5 Yogotoマルシェの様子


◆農業に関する教育活動

 当社ではブドウ栽培やワイン事業について、現場に触れる経験や技術・知識の継承を目指し、教育活動にも取り組んでいます。2022年はコロナ禍で中断していた龍谷大学農学部からのインターンシップ受け入れを再開し、鳥取の国公立大学を対象としたインターンシップの受け入れも新たに始めました。2名の学生に参加していただき、ワイナリー事業、そして鳥取の農業について体験プログラムを実施しました。


 写真6 インターンシップの様子(鳥取大学学生)


 写真6 インターンシップの様子(龍谷大学学生)



3-5 活動や取組実績(抜粋)

4月22日   2022年版サステナビリティレポート発信

6月27日   鳥取県立鳥取東高校講演「鳥取学」講演

7月7日    鳥取市立国府中学校「働く人に学ぶ」講師

7月22日   とっとりSDGs企業認定

7月29日   鳥取環境大学環境学部環境学科ゼミ活動受け入れ 14名実施

8月23日   鳥取大学Small CoREプロジェクト「さけプロ」ワイナリーツアー 16名実施

9月15日   鳥取市立鳥取南中学校見学授業受け入れ 30名実施

10月5日   市内保育園 園外保育受け入れ 35名実施

12月28日  鳥取県男女共同参画社会推進企業認定

2月8日    鳥取県立鳥取東高校「鳥取学」講演 

3月7~10日 「FOODEX JAPAN2023」 初出展(鳥取県ブース内)300社以上の来訪


4  今後の取り組み

 兎ッ兎ワイナリーは2023年に新たな取り組みとして2つのプロジェクトを進めて参ります。

 第一に、山陰地方のワイナリーや栽培農家の技術向上を目指し、ワイン用ブドウ栽培の定期研修会をします。上述した梅垣誠氏の考えや技術を次世代の造り手に継承するため、2023年を通して「梅垣塾」を開設いたしました。山陰地方のブドウ栽培家やワイナリー関係者、県の普及員などの専門家を対象とした研修会を実施することで、山陰地方における持続的なワイン造りを実現するための技術普及につなげていきます。

 第二に、醸造中に発生する二酸化炭素の有効活用を目指して研究機関と脱炭素を模索していきます。醸造中に酵母がアルコール醗酵をすることで二酸化炭素が排出されます。この排出された二酸化炭素は生物が発生する二酸化炭素のため、会社が排出する二酸化炭素としては数えられませんがこの二酸化炭素を農作物の栽培に活かす研究に挑戦します。


【お問い合わせ先】

株式会社兎ッ兎ワイナリー 担当:野口 

emil:totto-winery@dune.ocn.ne.jp




サスティナビリティレポート2023JAP_fin
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