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ハーベストレポート2024

執筆者の写真: totto winerytotto winery

【概要】

 当社では、地球温暖化の影響による、春の高温化や夏の猛暑日の増加に伴い、ブドウの収穫量減少に近年悩まされています。そこで、本年は栽培方針を大きく変更し、次に示す3つの対策を行い、実成りの改善・収穫量の回復を目指しました。1つ目に圃場の雑草の背丈を大きく伸ばすことで土壌の露出を極力少なくしたこと、2つ目に灌水の頻度を増やしたこと、3つ目に樹勢を抑えるような新梢管理を行ったことです。これらの対策により、収穫量を大きく回復することができた他、収穫時期直前の晴天により、果実から余分な水分が抜け、果実味が凝縮した良質なブドウが収穫できました。以下、今期のブドウの栽培状況そして期待されるワインの品質について、気温、降水量、日照などの気象状況と合わせて報告します。

 

1 各月の気象状況とブドウの栽培状況

  図1、2は鳥取市における各月の上旬(1日~10日)・中旬(11日~20日)・下旬(21日~月末日)の平均気温の推移及び合計降水量(気象庁|過去の気象データ検索 (jma.go.jp参照)をそれぞれ表しています。図1より、本年の平均気温については、4月と9月上旬・中旬は平年より気温の高い日が続きましたが、他は平年並みでありました。また、図2により、降水量については6月下旬から7月中旬にかけてまとまった降雨がありましたが、8月上旬から9月下旬にかけて降水量は少なく、乾燥した日が続きました。各月の気象状況とブドウ栽培状況について表1に示します。

 

図1 鳥取市の平均気温の推移


図2 鳥取市の合計降水量

 

表1 各月の気象状況とブドウ栽培の状況

気象状況とブドウ栽培の状況

4月

各ブドウの萌芽日は平年並みでありましたが、4月は平年に比べ気温が高い日が続いたため、展葉の進行は早く進みました。

5月

 5月の降水量は、平年より多くなりましたが、開花時期(14日から26日にかけて)の降水は無く、乾燥した日々が続いたため、良好な開花そして収穫時期の結実に繋がりました。一方で、開花には水分や栄養を多く必要とするため、乾燥が進行した一部の圃場では潅水を行いました。

6月

今年の梅雨入りは6月22日であり、平年よりも16日遅くなりました。そのため、上旬から中旬にかけては降水量が少なく、ブドウの育成状況は順調でした。しかし、6月から7月にかけて、果皮や果肉の褐変の脅威となるカメムシ(害虫)が一部の圃場で大量発生したため、防除、補殺等の対策を行い、被害の拡大防止に努めました。

7月

今年の梅雨明けは7月21日と平年より2日遅くなりました。上旬の降水量は過去数年で最も多く、灰かび等の病気が心配されましたが、防除や枝管理により被害を最小限に抑えました。一方で、下旬は暑く晴れた日が続き、昨年同様圃場の乾燥が深刻な問題となりました。今年は乾燥対策として、平年圃場に生える雑草の背丈を10㎝程度残しているところ、雑草の背丈を50cm以上残し、直射日光が地面にあたる面積を極力小さくすることで地表からの水分蒸発を防ぎました。

8月

8月上旬から中旬にかけて降水量も少ない猛暑日が続いたため、一部の樹では葉や実を落としたことから、灌水を断続的に行いブドウの樹の枯れを防ぎました。一方で強い乾燥のおかげで余分な水分がなくなったブドウの果実は、糖度が上昇し、果実味の凝縮したブドウとなり、非常に良い状態収穫時期を迎えることができました。

9月

9月上旬の降水量が少なかったため、収穫期の9月上旬から中旬にかけてブドウが裂果せず、糖度・酸度ともに良好な状態で収穫できました。今期のワインの品質は非常に期待できます。


2 ブドウ品種別の栽培状況

 当社が主として栽培している日本品種及びオリジナル品種の栽培状況について詳細を報告します。

 

(1)ヤマブラン(ピノノワールとヤマブドウの交配品種)

 山梨大学で夏季高温多湿の日本での栽培を目的に開発されたこの品種は、裂果しない、果粒が小さい、ワインの品質が優れているなどの特徴を持ちます。

 本年は春先の霜被害に遭わず、順調な生育となりました。また、昨年悩まされた花振るい(開花した花が落ち受粉できない症状)の対応策として例年とは異なる新梢管理を行ったことや開花時期の降水量が少なかったことにより、花振るいの症状が軽減されました。本年の棚仕立てのブドウの新梢管理については、新梢の先端を下に向けることで、樹勢を抑え、栄養を開花に使えるよう管理しました。今年の実なりは良好であり、収穫量も昨年より72.8%増えました。収穫量が大きく増えたため、スパークリングワインの製造量も増やしました。収穫時の状態も良好であったことからワインの品質も昨年より良くなると期待しています。


ヤマブラン(6月20日撮影)

 

ヤマブラン(9月10日撮影)


 

(2)ヤマソービニオン(ヤマブドウとカベルネソーヴィニョンの交配品種)

 山梨大学で夏季高温多湿の日本での栽培を目的に開発されたこの品種は、ヤマブランと同じような特徴を持ち、赤ワイン用ブドウとして重要な着色についても、曇りの多い鳥取でしっかりと着色ができるブドウです。

 この品種も霜被害に遭うことが無く、健全に成長しました。また、ヤマソービニオンは昨年乾燥の影響を強く受けたため、今年は灌水と雑草管理によって乾燥対策を行いました。葉の日焼けなどの症状が一部ありましたが、昨年よりはその症状も少なく、効果があったと考えています。乾燥対策により昨年よりも収量は23.4%伸ばし、収穫時のブドウの状態も良好であったことから良い品質のワインができると期待しています。

ヤマソービニオン(9月10日撮影)

 

 

(3)宇倍野/うべの(兎ッ兎ワイナリーオリジナル白ワイン用ブドウ品種)

 鳥取市国府町の地で長く作り続けるために、鳥取の気候に対応し、かつワイン用品種として高品質であることを目指して開発された兎ッ兎ワイナリーオリジナル品種です。

 2022年に初めて醸造・販売された宇倍野ですが、パイナップルのような南国果実の芳香や熟した果実のような味わいを評価していただき、169本あったボトルは販売3か月で完売しました。

 昨年は台風の影響で早期収穫を強いられるなど、思うような収穫・仕込みができませんでしたが、今年はブドウの熟期を待った収穫ができ、収穫量も昨年より143.4%と大きく伸ばしました。ブドウの状態も非常に良好であり、ワインの仕上がりも期待できます。また、現在栽培面積を増やしている品種であり、製造量も今後増やしていきたいと考えています。



宇倍野(9月4日撮影)


宇倍野(9月19日撮影)

 

 

(4)Lino/リーノ(兎ッ兎ワイナリーオリジナル白ワイン用ブドウ品種)

 この品種は宇倍野と同様の目的で開発された品種です。

 当社が栽培するワイン用ブドウの中では最も収穫時期が早い品種で、今年は8月14日に収穫しました。早く収穫できる品種は、8月中旬以降の天気によるリスク(台風など)を回避できる点において非常に優秀です。

 今年は幼木から成木へと成長し、収穫ができるブドウの栽培面積が増えたことから、収量も昨年比の464.7%と大きく伸ばしました。他品種と比べるとまだまだ収量は少ないため、現在も栽培面積を増やしている品種です。収穫時のブドウの状態も非常に良かったことから良い品質のワインができると期待しています。

リーノ(8月14日撮影)

 

 

(5)赤ワイン用新品種(以下、新品種赤)

 2023年1月にリリースした宇倍野及びLinoと同じく、鳥取の 環境で長く作り続けられる赤ワイン用品種の栽培研究も行っており、本年は新品種赤で醸造したワインのリリースを予定しています。新品種赤は、耐病性や耐裂果性など年々大きく変化する気候に対応できる能力を備えています。昨年醸造したワインは未販売のために、ワインの評価は定まっていませんが、鳥取の環境下で健全な育成状況を続けており、栽培面では期待される能力を十分に発揮しています。

新品種赤(9月10日撮影)




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