top of page
  • 執筆者の写真totto winery

ハーベストレポート2023



はじめに

2022年9月に兎ッ兎ワイナリー初となるハーベストレポートをリリースしました。昨年は読んでいただいた皆様から多くの反響があり、我々の取り組みを目に見える形で残すことの大切さを実感しました。

今年のブドウ栽培について、気温や雨量、日照などの気候条件と共にそれぞれの品種ごとの生育状況や、期待できるワインの品質についてご報告します。



1 今シーズンの総評

冬から春にかけて降雪が少なく、暖かい日々が続きました。例年より早い桜の開花が見られる中で、ブドウの成長も例年より早いペースで進みました。萌芽(ブドウの樹から芽が出ること)は昨年と比べて1週間から2週間早く、霜被害が懸念されましたが、大きな被害はなく順調に成長しました。

5月は例年より雨が多く降りました。ブドウの開花時期であるこの季節の雨は、ブドウの結実に大きく影響する花振るいに繋がります。一部の品種はこの雨の影響でブドウの結実が不足し収量が減少する見込みですが、ワイン用ブドウにおいて収量の減少はブドウ果実の品質向上につながると考えられており前向きに捉えていくことができる要素です。

本年は例年より8日早く、5月29日に梅雨入りとなりました。梅雨入りが早まったことにより病気の発生も早くなりました。梅雨は、降雨量の増加、日照量の減少、湿度の上昇などブドウ栽培にとってのデメリットを増やします。

長引く梅雨は、例年よりも多い降水量をもたらしました。べと病や黒とう病※などの発生も見られましたが、品種が持つ病気への耐性や防除作業によって梅雨を乗り切ることができました。(※黒とう病:糸状菌によって発生する病害。枝先の枯れや果実の肥大不良を起こす。)

7月20日の梅雨明け以降は猛暑日が25日続き、降水はほとんどありませんでした。雨量がほとんどないことで、ブドウの果実はより成熟が進みますが、あまりにも気温が高すぎる日が続き、ブドウの生育に必要な水分を確保しにくい環境が続きました。果実成熟期のため、不要な潅水は避けたい状況でしたが、樹の健全な成長のために潅水を行いました。しかし多くの圃場で地表の乾燥が見られ、一部の樹では枯れが大きく進むような現象も起きました。



地表の乾燥により枯れるブドウの樹 (2023年8月14日撮影)



2022年の同じ畑の様子(2022年9月中旬撮影)


8月15日に台風7号が鳥取に最接近し、鳥取市全域に大雨特別警報が出るなど、甚大な被害を鳥取県東部に及ぼしました。ワイナリーでも様々な被害が発生しました。特に、自社独自のブドウ品種「宇倍野」を栽培する畑では、棚が倒壊するなど今までにない被害を受けました。

台風の影響を考慮し、成熟が一定のレベルまで到達しているブドウ品種は台風前に収穫を行い、未成熟のものは台風後に様子を見て随時収穫を行いました。

台風前に収穫できたブドウは、天気にも恵まれ非常に良いコンディションでした。台風通過直後に収穫したブドウは、水分過多により裂果する前に収穫をするなどの対策を行いました。様々なコンディションのブドウがある中で、私たちが創業以来取り組んできた低温醗酵を用いたワイン醸造をすることで、ブドウが持つポテンシャルを最大限まで引き出すことができると私たちは考えています。

2023ヴィンテージは生活環境を脅かされるほどの局地的短時間の降水に見舞われましたが、致命的な被害もなくブドウの収穫を無事に迎えることができました。

     

台風被害を受けた圃場


【台風7号について】

1時間あたりの降水量:63mm(8月の観測史上最大)

合計降水量:225.5mm(例年の8月合計降水量の2倍)

最大瞬間風速:24.6m/s

平均風速:8.2m/s



図1 鳥取市の平均気温の推移



図2 鳥取市の降水量の推移


2 ブドウの品種別報告

(1)ヤマブラン

山梨大学で、夏季高温多湿の日本での栽培を目的に開発されたこの品種は、ピノノワールとヤマブドウの交配品種であり、裂果しない、果粒が小さい、ワインの品質が優れているなどの特徴を持ちます。

本年は春先の霜被害に遭うことがなく良い状態で生育しましたが、4月から6月にかけて例年より多く雨が降ったことで花振るいなど結実に影響を及ぼしました。また、一部べと病などの被害も見られましたが、梅雨、猛暑そして台風を乗り切り、ひと粒ひと粒が果実味の凝縮したブドウとなりました。本年の収穫も非常に待ち遠しい兎ッ兎ワイナリーのフラッグシップ品種です。

  

ヤマブラン(8月14日撮影)


(2)ヤマソービニオン

夏季高温多湿の日本で栽培されることを目的として山梨大学で開発されました。ヤマブドウとカベルネソーヴィニョンの交配品種であり、ヤマブランと同じような特徴を持ち、曇りの多い鳥取でしっかりと着色ができるブドウです。

こちらの品種も霜被害に遭うこと無く、健全に成長しました。降水量が多かったことで、枝の成長が早く、5月から6月は枝管理に追われました。また、べと病が例年より早く発生しましたが、品種の耐性と防除によってほとんど影響がない状態で成長しました。ヴェレゾン(ブドウの着色)時期は平年並みで、私たちが目指すブドウ品質に到達する見込みです。


ヤマソービニオン(8月14日撮影)


(3)宇倍野(ウベノ)

鳥取市国府町の地で長く作り続けるために、鳥取の気候に対応し、ワイン用品種として高品質であることを目指して開発した自社オリジナルの白ワイン用ブドウ品種です。昨年初めて醸造・販売された宇倍野ですが、パイナップルのような甘い果実の芳香や熟した果実のような味わいを評価していただき、169本あったボトルは販売3か月で完売しました。8月に発生した台風により、棚が壊れるなど最も大きな被害を受けた品種です。台風の被害により収穫が早まったことがワイン品質にどのような影響を与えるか懸念されます。しかし、宇倍野の持つポテンシャルを十分に引き出すため低温醗酵による丁寧な醸造により昨年のヴィンテージに引けを取らない味わいを目指していきます。

宇倍野(8月14日撮影)


(4)Lino(リーノ)

こちらの品種も宇倍野と同様の目的で開発した自社オリジナルの白ワイン用ブドウ品種です。

昨年のワインの出来は非常に良く、さわやかなマスカット香を中心としたフレッシュで酸味とミネラルをしっかり感じられるワインでした。

梅雨の影響を感じさせない良好な生育で、8月の台風の前に良好な状態で収穫できました。栽培醸造歴は浅いブドウですが、昨年よりも高品質なワインになることが期待できます。


Lino(8月14日撮影)


(5)自社オリジナル赤ワイン用新品種(※今年度中に正式名称が決定予定)

2023年1月にリリースした宇倍野及びLinoと同じく、鳥取の環境で長く栽培を続けられる赤ワイン用品種の研究も進めております。本年はその赤ワイン用新品種(以下、新品種赤)で醸造したワインのリリースを予定しております。

新品種赤は、ワインにした際の品質の高さはもちろんのこと、耐病性や対裂果性など毎年大きく変わる気候に対応できるための能力を備えています。

新品種赤は、比較的早熟であり、Linoと同じく台風前に良好な状態で収穫ができました。糖度も十分に確保し、ブドウの果皮も厚いため裂果もありませんでした。

今年度初めて醸造する、新品種赤にご期待ください。

新品種赤(8月14日撮影)


(6)その他欧米品種

我々は上記の品種以外にも欧米品種の栽培醸造を行っています。各品種も違った個性が見られ、ワインの出来が非常に楽しみです。


(a)シラー

8月中旬から下旬の降雨によって成熟前に果実の痛みが見られました。

シラー(8月14日撮影)


(b)ピノノワール

梅雨後の乾燥によって果実の糖度が向上し、果実味や香りも豊かな出来となりました。


ピノノワール(8月14日撮影)



(c)グルナッシュ

樹によって成熟速度の違いが見られますが、概ね順調に成長しました。

グルナッシュ(8月14日撮影)



(d)シャルドネ

台風による大雨によって一時畑が水没したが、健全な房に成長しました。

シャルドネ(8月14日撮影)


(e)リースリング

今シーズンは雨よけを設置したことにより、裂果のない健全な果実に成長しました。

リースリング(8月14日撮影)




【お問い合わせ】

株式会社兎ッ兎ワイナリー

担当:野口涼(栽培・醸造家)



ハーベストレポート2023_日本語版_20230929
.pdf
Download PDF • 1.26MB

閲覧数:69回0件のコメント

Comentários


bottom of page